労働基準法では、労働者が次のような労働を行った場合、使用者に割増賃金の支払いが義務付けられています。
① 法定労働時間(原則8時間/日、40時間/週)を超えて行われた時間外労働
② 法定休日(1日/週、または4日/月以上)に行われた休日労働
③ 深夜労働(22時~翌5時)
ただし、法定内残業(所定労働時間は超過しているが、法定労働時間内である残業)については、割増賃金の義務はありません。
割増賃金を算出する際は、1時間当たりの賃金を求め、そこに割増率をかけて計算します。
1時間当たりの賃金は、時給制ならばその時給単価そのままですが、日給制の場合は日給を所定労働時間数でわって求めます。
多くの会社は月給制ですが、月給制の場合、1か月の所定労働時間を求めることが必要になります。
「1か月の給与」と定義される中には、基本給の他に各種手当も含まれます。しかし、割増賃金の基礎となる1か月分の給与においては、次の7つの手当を差し引いた上で算出してもよいということになっています。
これらの手当が必ずしも除外の対象になる、という訳ではありません。これらが、除外の対象になるかどうかは、名称に関わらず、目的の実態によって判定されます。
どういうことを意味するのか具体的に説明しましょう。
家族手当;(除外対象)家族の人数に応じて支給されている場合。
(除外対象外)家族の人数に関係なく一律に支給されている場合。
通勤手当;(除外対象)通勤距離等に応じる実費である場合。
(除外対象外)通勤距離に関係なく、一律に支給されている場合。
住宅手当;(除外対象)住宅に要する費用に応じて算定されたもの(※)。
賃貸住宅の場合はその費用(付随する設備も含む)
持ち家の場合はその購入、管理費用
(除外対象外)住宅に要する費用でない費用に応じて算定される手当や
一律定額で支払われる場合
臨時に支払われる手当;(除外対象)臨時偶発的な理由に基づいて支払われたもの
(※「費用に応じて算定」とは費用に決まった率を乗じた額、あるいは費用を段階的に区分し、費用が増えるに従って額を多くするといったもので)
労働基準法に基づき、これ以外の手当に関してはすべて、割増賃金の算定基礎賃金に含まれなくてはいけません。具体的には、「世帯手当」「部門手当」「物価手当」「調整手当」などが挙げられます。→会社によって手当の名称はそれぞれなので、具体的名称をあげると混乱する可能性もあります。例えば、上記「世帯手当」を「家族手当」として支給している場合等。
会社によっても手当は多種多様に及ぶ事もありますが、割増賃金の算定において除外できる項目は、上述の7項目だけです。
「時間外労働の限度に関する基準」が改正され、労使当事者は限度時間を 超える時間外労働に対する割増賃金率を引上げる努力をするように表記されています。
月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で
計算した割増賃金を支払わなければなりません。
引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇を付与する制度(代替休暇)を 設けることができます。
労使協定により年次有給休暇を時間単位で付与することができるようになります。