「最低賃金制度」というものをご存じでしょうか?
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき、国が、賃金の最低限度額を定め、雇用主は、労働者にそれ以上の賃金を払わなければいけないという制度です。たとえ、雇用主と労働者双方の同意が成立していたとしても、この下限額は、法律によって、必ず、守られなければいけない額です。もちろん、これが守られない場合は、罰則規定があります。
最低賃金額は、都道府県によって異なっており、特殊な業務に対しては、最低賃金額とは別に「特定(産業別)最低賃金」が設定されています。
(特定(産業別)最低賃金は各都道府県によって適用対象となる労働者が定められています)
最低賃金は次の項目を考慮して決められています。
① 労働者の生計費
② 類似の労働者の賃金
③ 通常の事業の賃金支払い能力
最低賃金額は、これらの要因によって変動するものですので、各都道府県労働局のホームページなどで最新情報を確認するとよいでしょう。
では、実際の賃金と比べるにはどうしたらいいでしょうか?
最低賃金には、次にあげる手当、賃金は含んではいけません。
・精皆勤手当、通勤手当、家族手当
・臨時に支払われる賃金
・一か月を超える期間ごとに支払われる賃金
・時間外労働、休日労働、深夜労働手当
ですから、実際の賃金から、これらの手当、賃金を差し引いた額で比べなくてはいけません。
最低賃金は時給で示されています。時給で支払われる場合にのみ有効であるという訳ではなく、日給、週給、月給の場合は、時給に換算して比べればいいのです。
・時給制の場合 時間給 ≧ 最低賃金額
・日給制の場合 日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額
・週給制の場合 週給 ÷ 1週間の所定労働時間 ≧ 最低賃金額
・月給制の場合 月給 ÷ 1か月の所定労働時間 ≧ 最低賃金額
ただし、その週、月によって所定労働時間が異なる場合は年間で算出します。
(例)月給制の場合 (月給 × 12カ月) ÷ 年間総所定労働時間数
一方、最低賃金には一部例外があることも覚えておかなければいけません。
・精神・身体障害のため、能力が低い場合
・試用期間中
・都道府県知事の認定を受けた訓練を受けている場合
・所定労働時間が短い人。断続的に仕事をする人
以上のような場合は労働局長の許可のもと、最低賃金を下回る給与が認められています。
労働者の最低賃金を守る最低賃金制度ですが、問題点もあります。
全国の最低賃金を比較すると最高額は791円(東京都)、最低額は629円(沖縄県、宮崎県、佐賀県、長崎県)です。その差は162円もの広がりを持っています(平成21年度改定状況による。)。
先述の通り、最低賃金は①労働者の生計費②類似する労働者の賃金③事業所の賃金支払い能力を考慮して各都道府県の労働局によって決められていますが、実態は、中小零細企業の支払い能力を重視して決められているという事です。もちろん、これは無視できないことであり、この事ばかりを非難する事も出来ません。ただ、憲法25条による「健康で文化的な最低生活を営む」権利は、どうなるのでしょうか。
最低賃金の引き上げ、最低賃金制度の見直しを訴える動きが、出てきています。
「時間外労働の限度に関する基準」が改正され、労使当事者は限度時間を 超える時間外労働に対する割増賃金率を引上げる努力をするように表記されています。
月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で
計算した割増賃金を支払わなければなりません。
引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇を付与する制度(代替休暇)を 設けることができます。
労使協定により年次有給休暇を時間単位で付与することができるようになります。