雇用の形態が多様化し、ひとつ会社の中に、様々な雇用条件で働いている人が存在するようになりました。一方で、依然として減ることのない「残業代問題」。賃金未払い残業、つまり「サービス残業」を経験したことが無い人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
正規社員、非正規社員(パート、アルバイト、嘱託社員、契約社員、派遣社員)に関わらず、客観的にみて、「弱い立場」である事には違いがなく、サービス残業を余儀なくされているようです。
雇用形態別残業
1. 正社員
「残業は○○時間まで」といった内規はあるが、実際は仕事があり、自主的な残業または、持ち帰りなど余儀なくされている。さらに、人件費削減のため、非正規社員の採用が抑えられ、業務が正社員に集中している。実態のない管理職への昇進によって、残業代をカットされてしまう「名ばかり管理職」まで、出てきている。
2. 非正規社員
毎日10分程度の残業をさせられていながら、すべて、切り捨てられる。又、正社員のサービス残業が常態化している会社では、同様の事を非正規社員にも求め、残業できない者は「使えない」「融通の利かない」という評価さえ受けてしまうことがある。急なリストラや、シフト移動に関しても、正社員より対象になり易い「より弱い立場」にあることから、残業を余儀なくされている。
雇用形態は多様化し、「働き方」の選択肢が広がってはいますが、残業問題は、どこでも、違った形で発生するもののようです。
株式会社東レ経営研究所は2009年10月、「サービス残業とその背景」という事でレポートを発表しています。その発表によると、近年減少傾向にあったサービス残業は2009年上半期に急増しているという事です。さらに、その増加には次のような傾向がみられるというのです。
① 企業規模 ⇒ 従業員数500人以上の大企業
② 雇用形態 ⇒ 正社員
③ 業種 ⇒ 鉱業、飲食店・宿泊業、情報通信業
弱い立場である中でも、安定していて、会社からも信頼されている正社員の残業が増えているというのです。このレポートでは、さらに次のような事が書かれています。
現在発生しているサービス残業は、経営者側と、労働者側の考え方のギャップから生まれてきているというのです。企業側は、この不景気を機に業務の平準化・効率化を図ろうと「残業削減」とうたっているが、労働者側には「会社は賃金を払いたくないから残業削減と言っている。仕事は全然減っていないのだから、サービス残業をすればいいのだろう」という誤解があると言うのです。
「企業側と労働者間の誤解」。「終身雇用」、一生、同じ会社で勤め上げていた時代には、このような事があったとは思えませんね。「サービス残業を減らす」のではなく、「残業を減らすこと」によって業務の効率化を図る事が、双方に有効的であるような対策が求められているのかもしれません。
「時間外労働の限度に関する基準」が改正され、労使当事者は限度時間を 超える時間外労働に対する割増賃金率を引上げる努力をするように表記されています。
月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で
計算した割増賃金を支払わなければなりません。
引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇を付与する制度(代替休暇)を 設けることができます。
労使協定により年次有給休暇を時間単位で付与することができるようになります。